研究テーマ

数値地形情報を用いた実在地域音響数値シミュレーション技術の研究開発

 

 

 

 

 

 

 近年の計算機技術および数値シミュレーション技術の飛躍的発展により、従来はマクロモデルに基づく音響伝搬予測式が適用されてきた実在地域での屋外音響伝搬問題に対し、音響数値シミュレーション技術の活用が現実的となってきました。実在地域の音響伝搬シミュレーションを精密な地形情報の下で行うことで、音環境アセスメントや市街地騒音マッピングの飛躍的な高精度化、さらには騒音予報など、音環境技術に新たな地平が開かれると期待されます。そこで本研究では、地理情報システム (GIS) データ、航空レーザースキャンデータなどの実在地域の数値地形情報を用いて、音響シミュレーションへの入力情報を生成します。さらに、この入力情報を用いて、従来はなかったような大規模数値シミュレーションを行い、シミュレーションデータから有用な情報をシミュレーション中および後処理で抽出する技術を開発実証しています。

気象と地表面吸音率の継続的測定による地表面吸音特性モデルの基礎的検討

 

 

 

 

 

 

 防災放送などの音響伝搬の検討や騒音評価の観点から、精確な屋外音響伝搬予測が重要です。ここで、屋外音響伝搬予測には、地表面の吸音特性の正確な把握が重要となります。地表面の吸音特性は地面の土質や土壌水分などの様々な条件によって変化しますが、それが具体的にどの程度変化するのかということについてはまだ明らかでありません。そのため、現在の屋外音響伝搬予測がどれだけ不確かであるかは分かっていません。
 ところで、地表面の音響特性に影響を与える土壌水分は、降水等の気象要素により変化することが推測されます。すなわち、地表面吸音特性は気象要素の影響を受けて変化すると推測されます。
 そこで本研究では、気象、土壌水分、地表面吸音率を定点で継続的に測定し、地表面吸音率がどの程度変動するのかを調べています。また、気象要素からの地表面吸音特性モデルの導出も試みています。

土の広帯域音響特性に対する気相及び粒径組成の影響に関する研究














 土の音響特性は、気液相比率により相違します。しかしながら、その詳細な様相は明らかではありません。さらに、地表面騒音伝搬に寄与する地表面の音響特性は、広帯域で多様に変化し、それは土の組成などにも起因していると考えられます。そのため、土の影響を考慮した場合に、どれくらい地表面音響特性が変化するかを、定量化する必要があります。本研究では、少量の試料で条件を精密に制御した実験が可能な音響管を用いた伝達関数法により、広帯域における土の気相及び粒径組成の音響特性に対する影響を明らかにします。
 図1に、音響管の寸法及び実験系統立面図を示します。図中h [mm]は試料厚さです。図中の2本のマイクロホン間の伝達関数を測定し、吸音率を算出します。本研究では、気液相比率及び粒径組成の異なる3種の土試料の伝達関数を測定し、吸音率及び減衰定数を算出しました。

風による屋外拡声放送の聞き取りにくさへの影響に関する研究

 東日本大震災時には、災害時の情報伝達として屋外拡声放送の有用性が再認識された一方、放送内容が風の影響により聴き取りにくいとの声がありました。屋外拡声放送を正確に聴き取ることは、災害時に自分や周りの人間の命を守れるか否かに関わる非常に重大なことです。そこで、風況下での伝搬特性を適応した音声の聴取試験により、屋外拡声放送が風の影響を受けても聴き取り易い単語、音声を検討しています。
 聴取試験音声の作成にあたり、まず音の伝達・響きの情報が全て含まれていると言われるインパルス応答を、風況下において実測します。このインパルス応答と、聴取試験音声の基となるドライソース音声との畳み込み演算により、風況下での屋外拡声放送を模擬した音声が出来上がります。そして、どの音声が聴き取り易いか、聴き取りにくいかを判断するため聴取試験を実施し、どのような風環境や音声であれば聴き取り易いかを調べています。

公園および複合施設におけるイルミネーションの評価構造に関する研究

 近年、様々な場所でイルミネーションイベントが開催されています。ライトアップやイルミネーションは、地域活性化やイメージアップに繋がるだけでなく、その都市や空間のイメージ形成にも関わっています。よって現在では、イルミネーションは、より楽しく魅力的な空間づくりの有効な手段として認識されつつあります。そこで、鑑賞客の着眼点や好まれるイルミネーションの特徴を、動画鑑賞とアンケート調査によって明らかにし、魅力的な空間づくりの指針とします。

 

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